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水高地元が国際的研究成果の拠点に 史上初のブラックホール輪郭撮影  水沢VLBI観測所

     2019/04/15  H.OIKAWA   

 100年以上前、アインシュタインが一般相対性理論を基に存在を予言していたブラックホール。その輪郭が、日本などの国際チームによって史上初めて撮影され、4月10日、日本を含む世界6カ所で同時に行われた記者会見でその画像が公開されました。

 

EHTて撮影したM87中心ブラックホールの画像(Credit: EHT Collaboration)

 日本で行われた記者会見で発表を行ったのが国立天文台の本間希樹(ほんま・まれき)教授(47)。2015年4月から国立天文台水沢VLBI観測所所長を務めておられます。今回の史上初の快挙達成にはデータの画像化で本間教授をはじめとする日本人研究者が大きく貢献しました。母校水沢高校の地元である奥州市が研究拠点となった世界的成果は私たち同窓生にとっても非常にうれしいニュースでした。

 そもそもブラックホールとは? 非常に高密度で、強い重力を持つ天体です。あらゆるものを吸い込み、光さえ逃れられないため、直接姿を見ることはできません。1970年代初め、地球から6千光年離れた「はくちょう座X1」がエックス線の観測で発見されました。

 どうやってできるのでしょうか。太陽の数倍から10倍程度の重さを持つ星が一生を終えるとき、自らの重さによってつぶれてできるとされるのが「恒星質量ブラックホール」。太陽の100万倍以上と非常に重い「超巨大ブラックホール」は天の川銀河を含む多くの銀河の中心にあります。

M87中心ブラックホール周辺のイメージ図(Credit: Jordy Davelaar et al./Radboud University/BlackHoleCam)

 

 ブラックホール自体は直接見られないので周辺で起こる現象を観測します。周囲のガスが吸い込まれる際に出るエックス線や、ブラックホール同士が合体する時に波紋のように広がる時空間の揺れ「重力波」を捉える手法があります。

 今回は世界6カ所の電波望遠鏡を組み合わせ、直径1万キロという地球サイズの望遠鏡を仮想的に作りました。それを使ってブラックホールの周囲にある高温のガスなどが出す電波を捉えました。すると真ん中にブラックホールの輪郭が影のように浮かび上がったというわけです。

 その困難さはというと…今回のブラックホールは地球から見ると月面上のテニスボールほどの大きさしかありません。地球サイズの望遠鏡を作ったのはそれを鮮明に描くためです。視力は人だと良くて1・5くらいですが、この望遠鏡は300万にもなるということです。

 国立天文台のプレスリリースによると、今回撮影されたのは、おとめ座銀河団の楕円銀河M87の中心に位置する巨大ブラックホール。このブラックホールは、地球から5500万光年の距離にあり、その質量は太陽の65億倍にも及ぶということです。

 

楕円銀河M87の可視光写真(ESO)=国立天文台プレスリリースより

 

 世界6カ所の電波望遠鏡を組み合わせ、直径1万キロという地球サイズの仮装望遠鏡はイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と呼ばれ、EHT代表を務めるシェパード・ドールマン氏(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)は「200人以上の研究者がチーム一丸となって成し遂げた偉大な科学的業績」と今回の成果を振り返りました。

 

EHT望遠鏡配置図(Credit: NRAO/AUI/NSF)

 

 電波望遠鏡はアンテナの口径が大きいほど天体から来た電波を多くかき集められるため、画像が鮮明になるのですが、1台の望遠鏡を巨大化させるには限界があります。このため、世界のさまざまな場所にある望遠鏡をつなぎ、幅広く電波を捉えることで、仮想的に地球の直径に近い1万キロの口径に匹敵するデータを集めました。これが「超長基線電波干渉計(VLBI)」と呼ばれる方式です。

 ただし仮想アンテナは1枚のおわん形アンテナと違い、世界に散在する望遠鏡と望遠鏡の間に届いた電波のデータを拾うことはできないため、欠けた部分の形は統計学を利用して推定して補ったということです。

 水沢VLBI観測所の本間教授らは「スパースモデリング(Sparse Modeling)」と呼ばれる推定方法を基に、多くの専門家に適切だと認められる画像を作るデータ処理の手法を開発し、今回のプロジェクトに採用されました。

 さらに日本は参加した電波望遠鏡の一つ、南米チリにあるアルマの運用チームに加わっており、直径12メートルの望遠鏡約40台をつなげ、アルマだけで直径約70メートルという大型の仮想望遠鏡をつくり、データを提供しました。

 アルマが設置されたアタカマ砂漠は標高5千メートルという高地で気圧が低く、読み出し装置に空気の流れが必要なハードディスクが使えません。光ファイバーのケーブルを使い、標高の低い施設まで観測データを送るシステムには、国立天文台のグループが提供した技術が使用されるなど、ここでも日本が大きく貢献したということです。

 今後も観測が進めば、謎の多いこの暗黒の天体の正体だけでなく、星や銀河ができる過程も分かり、宇宙の歴史に迫ると期待されています。世界的研究成果の重要な拠点となった水沢VLBI観測所が身近にある私たちの母校水沢高校は文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定も受けています。今回のニュースが在校生の皆さんのよい刺激となり、本間先生の後に続く人材が現れてくれれば、と夢想します。(同窓会関東支部・及川仁=1980年卒)


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